世界的に有名なアイドルCBNのチャバネちゃんです。チャバネちゃんはどうぶつ出版社では未だ出演作はありませんが、いくつかオファーが来ているようです。今回は特別に、そのストーリーの一部をご紹介いたします。
「チャバネちゃん 新たなすみかを求めて」のストーリー
温かく平和なコロニー
ここは一年を通して温暖な気候である冷蔵庫の下。そこにはチャバネゴキブリのコロニーがありました。主人公のチャバネちゃんは、そのコロニーで生まれたばかりの赤ちゃんチャバネです。
コロニーでは数十匹単位でかたまりながら、それぞれが狩りに出かけたり、ご飯を食べたり、卵を産んだりと平和に暮らしていました。
まだまだ小さなチャバネちゃんは、指しゃぶりのクセが抜けませんが、ようやく一人で歩き、壁に着いたご飯を食べられるようになったころ、コロニーを揺るがす未曾有の危機が訪れます。
危機の前触れ
ある朝、何の前触れもなく、突然「黒いディスク」がコロニーに2~3つ、投げ込まれました。それは外から見ると真っ黒なのですが、側面にいくつかの出入り口があり、そこから甘く美味しそうな香りがしています。
何匹かの若いチャバネたちは面白半分でディスクの中へ入り、「クッキーやジャムを食べてきた」と自慢し合いました。一方で、年老いたチャバネたちは「あれに手を出してはいけない。あれは悪魔だ」と子供たちへ厳しく教え、チャバネちゃんたちはディスクに近寄ることさえ許されませんでした。
それから数日して、何匹かの若いチャバネたちが倒れたという噂が広がりました。その中には例の黒いディスクに入った者が多く含まれているようでした。
突然訪れる危機
そんなある日、いつものようにそれぞれの時間を過ごしているコロニーに、少し違う「風」が流れ込んできました。最初は柔らかに吹いていた風が、やがて薄い霧に変わり、それが徐々に濃く、大きく広がり始めました。
コロニーの外側にいた住人がその変化に真っ先に気づきました。「うっ!こっ、これは・・・・」と叫びながらコロンとひっくり返り動かなくなりました。
その倒れた住人の様子を見に駆け付けた他の者たちも、立て続けにコロン、コロンとひっくり返ります。
一気にコロニー全体に衝撃と同様が広がりました。
「ポイズンストームだ!!みんな、逃げろー!」と叫び声が上がると、コロニーの住民たちは蜂の子を散らしたように四方八方への逃げまどい、あたりはパニック状態になりました。
ところがどこへ行っても毒の嵐に阻まれ、コロンコロンとひっくり返る住民が続出しました。もうすでに、恐ろしいほどのチャバネたちがひっくり返り動かなくなっていました。
たくさんのチャバネたちにぶつかられ、何が起きているのかが分からないチャバネちゃん。大勢が逃げようとしていた同じ方法に向かおうとしたとき、誰かに手を引き留められました。
新しい小さな道
振り返ると、チャバネちゃんの手を引き留めていたのは近所のおじいちゃんでした。
「チャバネや、ちょいと待ちな」
チャバネちゃんはびっくりしましたが、おじいちゃんの落ち着いた様子をみて、少し安心しました。
「これは毒の嵐じゃ。今外に出たらすべてやられるから、奥の方へ行け」とコロニーの奥を指さしました。おじいちゃんが指をさしたその先の壁に、とても小さな穴が開いていました。大人のチャバネには通れませんが、チャバネちゃんくらいなら通れそうです。
「チャバネや、ワシはこんな日を何度も経験している。そのたびに多くの仲間を失ってきた。」
「今、その悪夢が再び訪れている。せめてお前だけでも生き延びてくれ」
おじいちゃんは優しくチャバネちゃんの頭をなでました。
「逃げる前にこれを少しずつ食べるんだよ」とおじいちゃんは茶色い欠片をチャバネちゃんに渡しました。
「これは黒いディスクで倒れたチャバネたちじゃ。薄まった毒を少しずつ取り込むことで、お前も強くなれる!」
「うん!」
「おじいちゃんは?」
「ワシはこの毒に慣れているから大丈夫じゃ。毒の嵐が去ったら、またばあさんと子作りじゃ!」
おじいちゃんは笑いながら、親指を上に上げました。
薄暗い毒の嵐の中で、おじいちゃんとおばあちゃんに見送られ、チャバネちゃんは小さく真っ暗な穴へ飛び込みました。
世界中で恐れられるチャバネ帝国を築き上げた女王チャバネの物語はここから始まるのでした。
つづく・・・。
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