魔法使いから新しいツノをもらったカブトムシですが、なんと生えてきたのは謎のキノコ。カブトムシに生えたキノコをめぐって、クヌギ森の昆虫たちが大騒ぎします。


ここは昆虫たちの住むクヌギ森。ヘビトンボとヘラクレスカブトムシが遠く離れたところから、クヌギ森に遊びに来ました。

今日はクヌギ森でかっこいいファッションショーを開催しているのです。昆虫たちは、ワイワイとにぎやかに過ごしています。

「今日のわたし、クモちゃんと一緒に、スパイダー・クワガタになってみたの!」
アリンコ軍団やテントウムシ、スズメバチは一斉に「かっこいー!」と声を上げています。

初めて見るヘビトンボに、みんなびっくり。
「かっこいい!」「王の風格だねぇ」

ひときわ皆の目を引いているのはヘラクレスカブトムシです。
「やっぱ、ヘラクレスさんは最高のかっこよさだね!」

そんな、にぎやかなファッションショーの後ろから、カブトムシがコッソリと昆虫たちを見ていました。

「やっぱり、わたしももう一本くらいツノが欲しいなー」と木の枝を頭にのせながら、カブトムシは思いました。

「そうねー、このくらい大きくてかっこいいツノ、みんながうらやむだろうな!」
カブトムシは、何としても新しいツノが欲しくなったのです。

「ようし、魔法使いにツノを増やしてもらおう!」と、カブトムシはクヌギ森の奥に住む魔法使いに会いに行くことにしました。

ここは、魔法使いが住む薄暗い森。
「うぅ~、なんだか怖いな~」

「そこにいるのは誰だい?」と魔法使いの大きな声に、カブトムシはビックリ。
「わたし・・・カブトムシです・・・」
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ」と魔法使いは優しく言いました。

「わたし、新しいカッコいいツノが欲しくて・・・もう何本か、このあたりに・・・」
とカブトムシは魔法使いに相談しました。
「フンフン、なるほど」と魔法使いも話を聞いてあげました。

「オーケー、オーケー、それじゃアナタの頭に新しい素敵なツノが生える魔法をかけてあげよう」
そう言って、魔法使いはカブトムシの頭にゾンビパウダーを吹きかけました。
「キャッ!」とビックリしたカブトムシ。
「大丈夫、大丈夫、すぐにかっこよくなるからねー」

「カッコいいツノが生えたら、また戻ってくるんだよー」と魔法使いは言いました。
カブトムシは、頭がムズムズする感じ。「早くツノ伸びると良いなー」と嬉しくなりました。

それからしばらくすると、カブトムシの頭から小さなツノが生えてきました。
そのツノは、見る見る大きくなっていきました。

今日もクヌギ森の昆虫たちは広場に集まって、みんな思い思い賑やかに過ごしています。
すると、その後ろからカブトムシがやってきました。

「うがー!」と突然、カブトムシが暴れ出し、昆虫たちはビックリ!
「なんだ、なんだ、どうしたんだ?」

「うがー!うがー!」
大暴れのカブトムシに昆虫たちは手のつけようがありません。

昆虫たちは「なんだかいつものカブトムシと違うねー」
「あんなに乱暴だったかしら・・・」と話しました。

昆虫たちはカブトムシの様子を観察してみました。
「う~ん、なんだかおかしいぞ~」

「あれ、カブトムシの頭に、何かついているねー」
「どうやら、あのキノコみたいなヤツが、ガルガル言ってるねー」
「あれって、もしかして・・・」

「あれは冬虫夏草!?」
「え、体中の養分を吸われて、カラカラになってしまうという!?」
「カブトムシ、どうなっちゃうのー」

早くキノコを取ってあげないと、カブトムシは完全に冬虫夏草になってしまいます!
「キノコ好きな昆虫と言ったら・・・」
「あの昆虫だねぇ」

「そうだ、キノコムシだ!」「おーい、キノコムシ〜!」
昆虫たちは、いっせいに大きな声で呼びました。

「呼んだ?」とキノコムシがやってきました。
「カブトムシがナゾのキノコに操られているんだ」
「何とかできるかい?」

「あー、キノコ!キノコの根っこが脳の中に入り込んで、操られているねー」
「これは慎重にいかないとねー」とキノコムシは言いました。
キノコムシはソロリ、ソロリとカブトムシに近づくと・・・

「エイッ」 ブチッ!
キノコムシは突然、カブトムシの頭のキノコを勢いよく抜き取りました。
「エッ⁉」昆虫たちとキノコは一斉に驚いたようす。

キノコムシは、取ったナゾのキノコをモグモグと、美味しそうに食べてしまいました。
キノコが取れたカブトムシはフラフラとしています。

「大丈夫?」昆虫たちはカブトムシを心配そうに見つめました。
「わたし、カッコいいツノが欲しくって…」と、カブトムシは魔法使いの話をしました。

「新しいツノなんて無くっても、そのツノは素敵だよ」と昆虫たちはカブトムシに言いました。
「うん…」とカブトムシは小さな声で答えました。
ようやく安心した昆虫たちは、それぞれの寝床に帰って行きました。

おや、昆虫たちが帰って、誰もいない地面が、モコモコと動いています。

ポコッ あれ、セミの幼虫‼
頭にまたナゾのキノコが付いているようです…。


昆虫絵本「クヌギ森のナゾのキノコ」に登場する昆虫は、クワガタとクモ、カブトムシ、ヘビトンボ、ヘラクレスカブトムシ、オサムシモドキ、キノコムシ、スズメバチ、テントウムシ、セミ、カメムシ、カナブン、ゾウムシ、アリ、セミの幼虫(マンドラゴラ)でした。
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