ある日、クワガタがクヌギ森を散歩していると、森のスキマからキラキラ光る場所が見えました。
光るものが気になったクワガタは、近くに降りていきました。
すると、地面に何やら埋まっています。
光る謎の四角を掘り出したクワガタ、「これは何だ?」
「よいしょ、よいしょ」と金色に光る四角いものを運ぶクワガタ。
虫たちが集まる場所へやっていました。
そこではカナブンとカメムシ、ゾウムシが集まっています。
セミも本を読みながら歩いていると・・・
「アッ‼」と大きな声を出しながら、セミの本から紙が飛び出してきました。
あまり急な出来事に、セミもクワガタもびっくりして尻もちをついてしまいました。
「ボク、パピー、その金印、ボクに押して!」と、紙のパピーはクワガタに言いました。
パピーは「ここに金印を押して!」と何度も言います。
クワガタは持っていた金印を見ると、そこには複雑な模様が刻まれています。
「ここに、ペトして!」
よく分からないまま、クワガタはパピーの要求通りに金印を押し付けました。
「ヨイショ」ペトッ
すると、突然あたりが大きく揺れ始め、地面がボコボコと動き始めました。
揺れはどんどん大きくなり、ついには山のような壁が出来上がりました。それから、クワガタとセミの足元から何かが出てきました。
驚いて飛んで逃げる虫たちもいます。
すると、地面から大きなロボットが出てきました。
これにはみんな大興奮!
昆虫たちが巨大ロボットを見上げる中、パピーは言いました。
「これ、ハンコを押した君のもの。昔々の大きなロボット」
「これがあれば、やりたいことは何でもできるよ!」
クワガタがロボットに上ると、頭のカプセルが開き、運転席が出てきました。
「ここに乗って動かすことができるから、だいたい何でもできるから」とパピーは使い方を説明しました。
運転席に乗り込んだクワガタ、「おや、こいつ、動くぞ」
巨大ロボットは、どうやらクワガタの思い通りに動くようです。
楽しくなってきたクワガタは昆虫たちを乗せ、ズシーン、ズシーンとクヌギ森の散歩に出かけることにしました。
それから、広場に巨大ロボットを止めると、昆虫たちは巨大ロボットに乗っかったり、滑り台にしたりしました。
巨大ロボットは新しい遊び場として、すっかり昆虫たちの人気者になったのです。
昆虫たちが巨大ロボットで遊んでいるその横で、様子を見ている影がひとつ。
楽しそうな様子を見ながら、カブトムシは思いました。
「私もあの大きなロボットに乗ってみたいわ・・・」
みんなに見えないように、後ろからソロリソロリと巨大ロボットに近づくカブトムシ。
「ヨイショ、ヨイショ」と巨大ロボットの運転席に乗り込みました。
カブトムシはガチャガチャとレバーを動かしてみると、腕がビュン!と動きました。
「こ、こいつ、動くぞっ!」
カブトムシはうれしくなりました。
カブトムシは巨大ロボットを完全に自分のものにしました。
「これは私のためのロボットなのよっ!」
巨大ロボットの強力な力を手に入れたカブトムシは
「このクヌギ森にある全ての蜜はわたしのものになるのよッ!」と大きな声で叫びました。
巨大ロボットを奪われてしまった昆虫たち、だまってみているわけがありません。
「ちょっと、あんた!そのロボットはわたしたちのロボットよ!」
「ちゃんと契約だってしたんだから!」
とクワガタが言いますが、カブトムシは知らん顔。
クワガタたちはロボットと取り戻すため、カブトムシに立ち向かいました。
昆虫合体!トゥ!
5匹の昆虫たちが合体し、スーパー昆虫として巨大ロボットに立ち向かいます。
「ワー、ワー」
ガガーン!
カブトムシが乗り込む巨大ロボットが大きなうなり声を上げました。
ところが、強力な力を持つ巨大ロボット・カブトムシには全く歯が立ちません。
昆虫たちはあっさりとやられてしまいました。
ザッ!ザッ‼
「ゲハハハハハッー」
カブトムシは不敵に笑い、言いました。
「すべての蜜を私のものに!」
カブトムシは笑いながら巨大ロボットと一緒に飛んでいきました。
残された昆虫たちは去り行く巨大ロボットを見つめるしかできませんでした。
ズシーン!
クヌギ森の蜜場で蜜をなめている昆虫たちのもとへ、巨大ロボットに乗ったカブトムシがやってきました。
カブトムシは蜜場の昆虫たちをザッ!ザッ!とどかしました。
昆虫たちはびっくりして逃げ出しました。
昆虫たちがいなくなった蜜場でカブトムシはペロペロ、ペロペロ。
「あぁ、蜜場を独り占めできるって、最高の気分だ!」
こんな調子で、巨大ロボットの力を手に入れたカブトムシは、クヌギ森中の蜜場という蜜場から虫たちを追い出し、すべてを自分だけのものにしました。
ペロペロペロペロペロペロ・・・
クヌギ森の蜜場をすべて手に入れたカブトムシ、お腹もいっぱいです。
巨大ロボットから降り、クヌギ森を見渡していると、満たされない気持ちに気づきました。
「なんだろう、心がいっぱいにならない感じがする・・・」
満たされない気持ちに気が付いたカブトムシは、ソワソワした気持ちになりました。
それから、しばらく考えたカブトムシは巨大ロボットを置いて、どこかへ飛んでいくのでした。
さっきまでカブトムシが舐めていた蜜場には、もうすっかりたくさんの昆虫たちが集まっています。
「あのう、みんな・・・」としょんぼりしながら、カブトムシは昆虫たちに話しかけました。
昆虫たちはカブトムシを取り囲みました。
「あなた、どこかに飛んで行ったら蜜場を独り占めできるわけないでしょう」とクワガタは言いました。
クヌギ森にたくさんある蜜場をずっと独り占めになんか、できないのです。
すっかり反省したカブトムシは、みんなに言われて気が付きました。
「うん、蜜場を独り占めなんか、する必要がなかったわ。ごめんなさいね」
「じゃ、あなた、独り占めしたバツとして、来月、黄金の蜜場への立ち入り禁止よッ!」とクワガタはカブトムシに言いました。
「ちょっと!それは違うんじゃないッ!?」とカブトムシは言い返します。
クワガタとカブトムシがケンカする横で、昆虫たちはみんな、蜜をペロペロ。
「またケンカしているね」
クヌギ森に、またいつものにぎやかさが戻ってきました。
おや、カブトムシが乗り捨てた巨大ロボットに、誰か乗り込もうとしています。
あれは、カメムシ?
強大な力を手に入れたカメムシ、野望はクヌギ森中をカメムシで埋め尽くすこと・・・。
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